情のない女

新幹線で片道約２万円の距離の友人から結婚式参加の打診をされた。

参加したいかと問われれば参加したい。この友人は10歳下なので結婚適齢期だが、こちとらアラフォーど真ん中だ。最後に参加した結婚式は何年前だったか。もはや次の結婚式は我が子が主役の時だろうと思っていたくらいだ。

しかし、式場までの道のりを考えると正直行きたくない。もっと正直に言うと金銭的にきつい。友人が言うには前日から前のりをした方がいいとのこと。交通費、宿泊費、ご祝儀、着て行く服。低予算に抑えても10万はかかる。友人自ら前のりをしろと言っているし、この距離を考えるとまさか全額自己負担させられるとは考え難い。しかしあてにするのもいやらしい。友人も出してくれる気があるならさっさと言ってくれまいかと筋違いの不満を抱え始めた。

仮に全額自己負担としよう。10万かけてお祝いに駆け付けたいかといえば、否である。そもそもどんなに親しかろうと「人の結婚式」というものにさっぱり興味がない。往復４万かけて３万のご祝儀渡すくらいなら、欠席して５万の祝儀と電報を送った方がいいのではと考える。同じ交通費をかけて現地に行くなら、結婚式とは関係ない日に訪ねて豪華なディナーでお祝いしてご祝儀を渡す方が私的には有意義だ。

しかも会場では確実にアウェーである。共通の、私と同い年の友人が一人いるのでギリギリボッチではない。しかしアラサー新婦の友人がひしめく中でのアラフォー。新婦と写真を撮る隙も与えられず、端のテーブルで料理をもくもくと食べるのだろう。

10万といえばほぼほぼ私の１回のボーナス額だ。そう考えるとますます躊躇う。そしてこんな事ばかり考えて悩んでるような友達がいのない私だ。渋々参加されても彼女もうれしくないだろう。

それに最近、自分のテリトリーから離れることに異様な不安を感じるのだ。地元と地続きですらない土地で、事件に巻き込まれたらどうすればいいのか。天災が起こって土地勘もない場所で動けなくなったら。逆に地元に天災が起こって一人残されるようなことになったら。行きか帰りの新幹線で何か起こったら。

唯一自信のある妄想力がここぞとばかりにフル回転をし、もう不安しかない。

式は３月だ。もし思い切って参加の返事をした場合、あと９カ月もこのネガティブな妄想に苦しまなければならないのだ。断れば罪悪感は大きいが１週間もたたずに落ち着くだろう。

どこだろうとお祝いに行くに決まってるじゃない！と迷わず言える共通の友人のまっすぐさがひたすらにうらやましい。